Home > 表紙によせて > 表紙によせて(2024.5〜2024.7) |
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仙台に転居して2年目の春、前年は3月末にもうソメイヨシノが満開となり、春一番の花を見逃してしまいましたが、今回はそうならないよう、冬のあいだにリサーチを重ねました。太平洋側とはいえ、ミスミソウやキバナノアマナの自生地が宮城県内にいくつか確認でき、このときはミスミソウが咲く時期を見越し、山形との県境に近い低山を訪ねました。 ミスミソウは期待どおりで、白のほか薄紅色のものも見つかりました。「これならほかにも、開花を迎えている植物も多いはず」と下山後に近くの谷間を散策したところ、遅くまで雪が残っていたらしく、湿った草地ではニリンソウ、ニッコウネコノメソウ、カタクリなどがちょうど満開となっていました。濃い青紫色のキクザキイチゲやスミレサイシンを見かけたことからすると、分水嶺より太平洋側といっても、植生は日本海側に近いのでしょう。 それらのうちひときわ目を引いたのがオクノアズマイチゲです。日本に自生するこの仲間のなかで、4cmにもなる大きな白い花をつけるのが特徴のアネモネで、根茎で栄養繁殖し、群生することも多いのですが、環境が今ひとつだと根生葉ばかりで花を上げるのはパラパラ、ということもあります。ところがここでは、日当たりがよいおかげか一面に花をつけ、空に向かって花びら(萼片)を広げて、まさに雪国の春「らんまん」といった趣きでした。 (2024.4.6 宮城県仙台市) ○野生植物写真館「オクノアズマイチゲ」へ ○「表紙によせて」バックナンバー |