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表紙によせて

 オウレンというと、一般には腹痛などの胃腸に関する症状改善に用いられる生薬の「黄連」として知られますが、植物としては、早春に花を咲かせる代表的な野草の1つでもあります。ミスミソウなどと同じく、常緑の葉をつけ、通年で地上に植物体があるため、キクザキイチゲヤマエンゴサクのような、いわゆる「スプリング・エフェメラル」には該当しません。とはいえ、雪も残るまだ寒いころからまっさきに花茎を上げるオウレンのようすは、春の訪れを感じさせてくれる雪国の風景と言えるでしょう。

 オウレンについては、小葉の切れこみぐあいによって、変種レベルでオウレン(キクバオウレン)、セリバオウレンコセリバオウレンに分けられており、「宮城県野生植物分布図集」によれば、宮城県には3変種いずれも分布することが知られています。関東南部ではほとんど自生を目にする機会がないこともあり、仙台で迎える2回目の春、これらのちがいを確認しながら撮影をしようと心に留めつつ、県内各地をめぐりました。3変種とも目にする機会を得ましたが、これらでいちばん早咲きの印象を受けたのがオウレンです。オウレンは日本海側多雪地を主な分布域としており、雪融け後、速やかに花を咲かせる能力が備わっているのでしょうか、このときも残雪の樹林下ではやばやと満開となっていました。

           (2024.3.9 宮城県仙台市)

○野生植物写真館「オウレン」
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