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表紙によせて

 ベンケイソウ科は多肉植物で、特徴的な草姿や花が魅力なのでしょう、自生種のなかにも、ミセバヤをはじめとして、イワレンゲツメレンゲなど、古くから園芸目的に栽培されてきた種類があります。このように珍重されがちなせいで盗掘に遭いやすく、また、人々の生活圏周辺の生育環境が悪化したことで、最近では目にする機会が少なくなっているグループの1つでもあります。

 アオノイワレンゲはイワレンゲの別変種にあたり、分布域が東北以北となっています。主に海岸近くの岩場に生えるということで、リアス式海岸や松島のある宮城県北部なら自生しているものが見られるかもしれない、とハマギクコハマギクなどの野菊の撮影とあわせ、足を向けてみました。

 ところが、1/2.5万地形図などで事前にアタリをつけたうえで、あちこちを訪ねてみたものの、咲いているのは野菊やアザミ類などで、アオノイワレンゲは見当たりません。この仲間が好むのは、明るく乾燥ぎみの岩場で草本がパラパラ生えているような環境です。そういえば、最初に車から横目に見たあたりにそのような地形があったなあ、とダメもとで寄り道したところ、ようやく、人目につかない岩場の斜面に群生するアオノイワレンゲに出会えました。猛暑で開花が遅れた影響か、満開にはやや早かったようで、蕾ばかりの株も多かったのですが、運よく花序の半ばまで満開となったものが見つかりました。
 
            (2023.10.29 宮城県)

○野生植物写真館「アオノイワレンゲ」
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