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仙台から神奈川県に戻った翌月、「せっかく近くなったのだから、この夏は中央高地の高山に行こう」と思いたち、じつに20年ぶりに南アルプスの北岳に1泊2日のテント行で登ってきました。常用していた広河原から大樺沢を登るルートが閉鎖されてしまい、初日は急登の御池ルートで白根御池小屋を経由して右俣コース、小太郎尾根を登って肩の小屋まで、2日目は山頂を越えて北岳山荘手前まで進み、トラバース道経由で八本歯のコルから下って御池ルートで広河原に戻りました。この時期の北岳は2回目ですが、リバーサルフィルムの撮影とあって抑えぎみにシャッターを切っていた当時とちがい、ずいぶん前にデジタルに移行済の今回は、撮り直しも含めてたっぷりじっくりと植物に向きあえました。 両日とも好天に恵まれて順調に足は進み、2日目の山頂手前では、雪融けの遅かった草地でヒメヨツバシオガマやシコタンソウが見られた一方で、百花繚乱の南東斜面ではタカネコウリンカ、キタダケトリカブト、キンロバイなど盛夏の花が群生し、うれしいことにアカイシリンドウやサンプクリンドウといった晩夏の花も咲きはじめていました。 八本歯のコルまで続く岩場がちの細尾根で、岩のすきまにまるでブーケを置いたように咲いていたのはシロバナタカネビランジです。登山道沿いのあちこちで満開となっていて、気のせいか、以前ここで見たときよりも数が増えているように思えました。直径3cmもある花は野生植物としては無類に花つきがよく、花色は「白花」といっても純白でなくわずかに色づいた薄桃色で、となりの鳳凰三山に生える濃桃色のタカネビランジとは対照的なポジションです。 (2024.8.10 山梨県北岳) ○野生植物写真館「シロバナタカネビランジ」へ ○「表紙によせて」バックナンバー |