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  表紙によせて
 九州でも有数の植物の宝庫である阿蘇ですが、関東地方からははるかかなたとあって、そうたびたび訪ねるわけにもいかないのが残念なところでした。未見の植物が多く残るまま月日が流れるうちに、縁あって長崎県に暮らすこととなり、季節を変えながら阿蘇まで足をのばせるようになりました。

 キスミレやハナシノブとならび、阿蘇を代表する植物といえるのがマツモトセンノウです。広大なススキ草原に点々と咲くというこの植物を観察しようと計画を立てましたが、どのようなところに生えるのか、そして梅雨時が花期とあって週末に気候が安定するかなど、不安を抱えるなかでの出発となりました。

 ほかの植物も観察しつつ車で阿蘇外輪山をめぐっていくうちに、赤牛が草を食む放牧地の片すみで、緑色のキャンパスに紅色の絵の具を落としたようにマツモトセンノウが花を開いているのが突然、目に入りました。いちど気づくと、生える環境がイメージできるようになり、その後も何ヶ所かでマツモトセンノウと出会う機会にめぐまれました。

 植物図鑑で見たマツモトセンノウの花は、同属のフシグロセンノウと似た色と思っていましたが、実際に目の当たりにしてみると、両種のちがいは花のかたちばかりでなく、蛍光オレンジのような朱色のフシグロセンノウに対し、マツモトセンノウの花は深い紅色で、明らかに色合いがちがうと実感できました。

        (2017.7.2 熊本県阿蘇)

「マツモトセンノウ」
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