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表紙によせて

 晩秋〜初冬に長崎市周辺の海岸を彩るのがツワブキホソバワダン、そしてシマカンギクなどの黄色の花をつけるキク科の植物たちです。西日本に分布するホソバワダンやシマカンギクについては、以前は別の植物の観察で九州に出向いたとき、あわせてカメラを向けるくらいだったのですが、長崎で暮らすようになって、じっくりと撮影できる機会が増えました。

 シマカンギクは、中国大陸に自生し、園芸植物として栽培されるイエギクの片親でもあるハイシマカンギクの母種にあたり、直立せずに斜上〜下垂することが多いこと以外は、イエギクの小ぎく品種とよく似ています。長崎では海岸近くの切通しや岩場に生えることが多いのですが、内陸部にはクリーム色や白い舌状花のものもときおりあって、どうやらこれらはイエギクとの雑種(サンインギク)と思われ、イエギクと近縁だけに雑種も生まれやすいようです。

 長崎市中心部から浦上川をはさんで西にそびえる稲佐山は、「世界新三大夜景」の1つを見渡せる景勝地として多くの観光客が訪れますが、山頂へと向かう道路沿いには法面や安山岩の露頭が現れ、シマカンギクをはじめ、ヤマジノギクダンギクを目にできます。このときはナンバンギセルなどを撮影しながら道路沿いを散策していたところ、かつて石切り場だったエリアがあるのに気づいて中に入ってみると、よほど条件がよいのか、花を密に垂れ下げるシマカンギクの群落に出会いました。

        (2019.12.1 長崎県長崎市)

○野生植物写真館「シマカンギク」
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