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  表紙によせて
 日本の高山は、草原、岩場、雪田のまわりなど多様な生育環境にめぐまれ、さまざまな植物が見られるのが特徴です。稜線の砂礫地は、そのなかでもとりわけ厳しい環境といえ、礫はガラガラとくずれやすく、周囲にさえぎるものもないため、しばしば風の通り道となります。ここでわずかに見られる植物がコマクサタカネスミレオンタデなどで、それだけの群落となっていることもよくあります。
 
 砂礫地に生える代表ともいえるコマクサは、馬の顔を思わせるピンク色の花と、パセリのような白っぽい緑の葉でかわいらしい印象がありますが、じつは地上部より地下部のほうがずっと大きく、礫の移動や強風ではがれてしまうことのないよう、地中に深く広げた根でしっかり支えているといいます。見かけによらない強靱さこそ、コマクサの本当の魅力かもしれません。
 
 コマクサは北海道〜中部地方の主に火山性の高山に分布し、わたしは硫黄山大雪山秋田駒ヶ岳白馬岳、乗鞍岳などで見ていますが、中央アルプスや南アルプスにはなく(木曽駒ヶ岳にはかつて自生)、火山性の高山でも、富士山のような新しい山には分布しません。7月中旬に八ヶ岳を訪ねるのは16年ぶりのこと、前回はまだつぼみばかりで撮影できなかったコマクサも、こんどはちょうど満開で、晴れわたった夏空のもと、風に花をゆらせていました。
 
       (2012.7.16 長野県八ヶ岳)

○野生植物写真館「コマクサ」
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