Home > 表紙によせて > 表紙によせて(2012.8〜2012.10) |
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日本の高山は、草原、岩場、雪田のまわりなど多様な生育環境にめぐまれ、さまざまな植物が見られるのが特徴です。稜線の砂礫地は、そのなかでもとりわけ厳しい環境といえ、礫はガラガラとくずれやすく、周囲にさえぎるものもないため、しばしば風の通り道となります。ここでわずかに見られる植物がコマクサやタカネスミレ、オンタデなどで、それだけの群落となっていることもよくあります。 砂礫地に生える代表ともいえるコマクサは、馬の顔を思わせるピンク色の花と、パセリのような白っぽい緑の葉でかわいらしい印象がありますが、じつは地上部より地下部のほうがずっと大きく、礫の移動や強風ではがれてしまうことのないよう、地中に深く広げた根でしっかり支えているといいます。見かけによらない強靱さこそ、コマクサの本当の魅力かもしれません。 コマクサは北海道〜中部地方の主に火山性の高山に分布し、わたしは硫黄山、大雪山、秋田駒ヶ岳、白馬岳、乗鞍岳などで見ていますが、中央アルプスや南アルプスにはなく(木曽駒ヶ岳にはかつて自生)、火山性の高山でも、富士山のような新しい山には分布しません。7月中旬に八ヶ岳を訪ねるのは16年ぶりのこと、前回はまだつぼみばかりで撮影できなかったコマクサも、こんどはちょうど満開で、晴れわたった夏空のもと、風に花をゆらせていました。 (2012.7.16 長野県八ヶ岳) ○野生植物写真館「コマクサ」へ ○「表紙によせて」バックナンバー |
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