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表紙によせて

 以前、高知県までシコクバイカオウレンの観察に出向いたとき、その下調べをするなかで、2004年に新種として論文で報告されたオウレンには、シコクバイカオウレンのほかにもう1種、ヒュウガオウレンがあることに気づきました。よく似たバイカオウレンは九州には分布せず、当初は屋久島に固有のオオゴカヨウオウレンに近縁とされたこともありましたが、この論文で独立種と整理されました。

 シコクバイカオウレンの次はヒュウガオウレンも、と思い定めながら7年が過ぎてしまいましたが、この2月、九州でも長崎からだと真裏になる宮崎県へとようやく足を向けることにしました。天気はまずまずとはいえ、南国宮崎でも山あいの沢すじを歩くとさすがに手がかじかみます。スギの樹林下を進むうちにポツポツと白い花が咲いているのが目に入り、ヒュウガオウレンとの対面となりました。

 ストロンを出さないことなどが近縁種との違いとされますが、見た目の印象でも花はバイカオウレンよりひと回り小さく、萼片はほっそりしているほか、群生してもまばらに生えていて、シコクバイカオウレンのように花がかたまって咲かないところなど、たしかに別種と感じられます。

 このときはわたしにはめずらしく、長距離バスで宮崎まで移動したおかげで、車窓からの九州各地の風景をゆっくりと眺めることができ、また、真冬とあってほかに目当ての植物もなく、じっくりとヒュウガオウレンと向き合うことのできる貴重な機会となりました。

           (2019.2.16 宮崎県)

○野生植物写真館「ヒュウガオウレン」
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