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島原半島は長崎県の農業生産額の約半分を担う農業地帯で、雲仙普賢岳の裾野には広大な畑や農業用ハウスが広がり、ばれいしょ、にんじんなどの露地野菜や、いちご、トマトなどの施設野菜を中心に多くの作物が生産され、首都圏や京阪神に出荷されています。この地域は豊かな自然環境にも恵まれ、明治初期より植生調査が行われており、1934年には全国初の国立公園に指定されました。 この地域の名称を冠した植物としては、ウンゼンアザミ、ウンゼンマンネングサ、ウンゼンカンアオイなど「雲仙」はいくつもあるのですが、「島原」はなぜか少なく、まず名前が挙がるのがシマバライチゴです。イチゴといってもこの地域の主要作物のストロベリーではなく、ラズベリーの仲間となるキイチゴです。国内では島原半島と熊本県の天草地方だけから知られますが、平成3年の雲仙普賢岳の噴火で火砕流が発生したエリアでは、シマバライチゴは壊滅的な被害を受けたといいます。ところがそこは、撹乱後の先駆的な植物とされるキイチゴだけあって、地上部は枯れてしまっても、生き残った地下部からシュートをのばし、今やかつて以上に繁茂するほどに復活しています。 今回は、9月に花を撮影して以来の再訪となりましたが、房なりに実った果実はなんだかぶどうを連想させ、ほかのキイチゴとは違ったおもむきで、赤い果実と緑の葉の組合せはクリスマスムードすらあります。 (2018.12.23 長崎県) ○野生植物写真館「シマバライチゴ」へ ○「表紙によせて」バックナンバー |