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表紙によせて

 植物観察で初めて長崎県を訪ねたのはもう17年前、永田芳男さんの「秋の野草」に掲載されたチョウセンノギクヒナヒゴタイイトラッキョウなど、長崎県ならではの植物の数々に魅せられてのことでした。移動中にはウラギクの大群落も見ることができ、とても充実した観察行となったのですが、ダンギクだけはもう花が終わっていたのが、ただひとつの心残りでした。

 この春から長崎市内で暮らすようになり、「長崎県植物誌」などで情報収集してみると、ダンギクは県内では思っていたより数が多いらしく、さっそく自宅近くの山を散策すると、凝灰岩の露頭に生えるダンギクを見つかりました。それから半年近くが過ぎ、もう咲きだしているだろうと再訪すると、遠くからも風にゆれる青紫色の花序がすぐにわかり、長年の思いがようやくかなったことにうれしくなりました。

 その後、10月に入って五島列島や県北部でもダンギクを観察する機会がありましたが、やっぱり最初に実物を見ることができたこのダンギクがいちばん強く目に焼きついています。長崎県からは、島しょ部などを中心に、ダンギクをはじめとして朝鮮半島やユーラシア大陸と共通する植物が多く知られています。図鑑やウェブサイトに掲載されることの少ない植物もありますので、「野生植物写真館」でしっかり紹介していきたいと思います。

          (2017.10.1 長崎県長崎市)

○野生植物写真館「ダンギク」
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