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表紙によせて

 北海道の高山のなかでも、その規模、植物の種類数とも随一の大雪山ですが、長く足が遠のいたままとなっており、この年の夏、10年ぶりにようやく訪ねることができました。今回は8月中旬とあって、晩夏から秋口に咲く植物が見られるだろうと期待はふくらみ、あとの心配は当日の空もようばかりです。
 
 初日は大雪高原温泉登山口から歩きはじめてすぐに小雨まじりとなり、結局、白雲岳避難小屋に着くまで天候は回復しませんでしたが、翌日、目覚めてすぐに小屋の外に出てみると、空はみごとに晴れわたり、これなら充実した1日を過ごすことができると、さっそく支度をととのえて高根ヶ原に向かって歩きはじめました。
 
 広大な高根ヶ原は、視界はどこまでも広く、目の前には忠別岳、ふりかえれば白雲岳がそびえ、遠くには旭岳も望むことができます。だれもいない登山道を進むうち、ユキバトウヒレンシロサマニヨモギなどの砂礫地の植物のほか、沢ぞいではミヤマバイケイソウも現れます。
 
 ふと遠くを見ると、明るい緑の草地に、紫色の絵の具をたらしたように花が咲いているのが目に入りました。近づいてみて、副裂片が直立した独特の花から、国内では北海道だけから知られるリシリリンドウとわかりました。天気が悪いと花は閉じたままですが、このときは快晴とあって、せいいっぱいに花を開いていました。
         (2009.8.16 北海道大雪山)

○野生植物図鑑「リシリリンドウ」
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