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表紙によせて

 この日はまだ暗いうちに家を出て、池袋経由で秩父地方へと出かけました。西武鉄道の特急レッドアローに乗るのは、じつに20年ぶりくらいのことでしょうか。秩父地方に近づくにつれ、車窓から見える山のいただきには残雪が目につくようになり、春の気配はだんだんうすらいできました。

 こんなに早く咲いているのだろうか、という不安にかられながら現地を訪ねたところ、あたりで花をつけているのはオオイヌノフグリくらいしかないというのに、マルミノウルシはすでに満開となって、あかるい斜面のところどころに生えていました。葉を広げるのももどかしいように、はやばやと花を咲かせているものも多く、うわさにたがわぬ早咲きのトウダイグサと実感しました。

 トウダイグサの仲間は、葉に含まれる色素がどのように影響するのか、冬から早春にかけての寒い時期に葉が赤く染まるものが多く、ほかには海岸に生えるイワタイゲキもそのような傾向があるほか、晩秋に真っ赤に紅葉するハギクソウなども知られています。芽出しのマルミノウルシはとりわけその傾向が強く、「ベニタイゲキ」という別名を持つのも納得がいきます。

          (2009.3.3 埼玉県秩父市)

○野生植物図鑑「マルミノウルシ」
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