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表紙によせて

 ユリは私たちにとって身近な花のひとつで、花きとしての作付面積は球根で1位、切り花で5位となっており、また、植物新品種として品種登録されたものは400品種ちかくにのぼるなど、農作物としても重要であることがわかります。花きの中でもとりわけ大きな花をつけ、花の色も豊富で香りの強いユリは、花束や生け花として、また花壇でも広く用いられます。

 野生のユリについてみると、西日本ではササユリが、東日本ではヤマユリがそれぞれ人里に近い野山に生え、古くから日本人の目にふれる機会が多かったものと想像されます。ところが、ユリが家紋として利用されるようになったのは近世のことで、キリキキョウにくらべると、ユリを家紋としている家はごくわずかです。一方、西洋に目を転じると、ユリの紋章はフランス国王のブルボン家に代表される、とてもポピュラーな紋章で、私たちもさまざまなところでこの紋章を見ることがあります。

 私が住む神奈川県は、ヤマユリを県花としているだけあって、ヤマユリを目にする機会が多く、都市近郊の県東部でも6月中旬になると、ちょっとした丘陵の斜面や崖でヤマユリが咲きはじめます。少し遅れて7月ごろに西部の箱根丹沢まで足をのばせば、自動車道路ぞいでもたくさんのヤマユリが、白い大きな花を風にゆらせているのを見ることができます。

         (2005.6.18 神奈川県鎌倉市)

○野生植物図鑑「ヤマユリ」
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