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表紙によせて

 ツメレンゲについては、「レッドデータプランツ」(山と渓谷社)に永田芳男さんが高知県で撮影された写真が掲載されていて、あるとき100m以上もえんえんと咲いているようすを見て「驚きを通り越してあきれてしまった」というコメントが添えられています。神奈川県内では、このようなツメレンゲの大群落は望むべくもないと思っていたのですが、たまたま得た情報をもとに自生地を訪問したところ、川沿いに群生するツメレンゲを見ることができました。おそらく、はるか上流から流れ落ちてきたものが運よく定着したのでしょう。

 ツメレンゲはベンケイソウ科の多年草で、数年かけて生長し、開花するとその株は枯れるといいます。爪にたとえられてその名前の由来ともなった多肉質の葉は、夜間は気孔を開いて二酸化炭素を取りこんで有機酸として蓄え、日差しが照りつける日中は、蒸散を防ぐよう気孔を閉じたまま、有機酸から二酸化炭素を生成して光合成を行うことで、乾燥環境下にも耐えられるようになっていて、いわゆるCAM(ベンケイソウ型有機酸代謝、Cassulacean Acid Metabolism)植物とされます。ベンケイソウ科に共通する代謝のしくみですが、水分が補給されにくい岩場に生えるツメレンゲにとっては、とりわけ役に立っているはずです。

           (2022.11.13 神奈川県)

○野生植物写真館「ツメレンゲ」
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