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もう30年以上前、植物観察をはじめたころによく開いたのが山渓カラー名鑑の「日本の高山植物」でした。ページをめくるたびに色鮮やかな高山植物が現れ、「この山に登ればこんな植物がみられるのか」と心躍らせました。実際、カメラと三脚を担いで高山に登り、初めての植物を見るたびに、いわば「ステージクリアできた!」と、ひとり満足していました。 ラン科のページをめくると、紅紫色の花をつけるもののなかでも、ハクサンチドリやテガタチドリのような純然たる高山植物以外に、ホテイラン、ミヤマモジズリのように、高山に向かう途中の針葉樹林下でみられる種類も掲載されていて、その多くを見る機会があったのですが、スポッと抜けたままになっていたのがカモメランでした。 カモメランをメインに出かけることにしたのはずっと後のこと、とはいえ、カモメランの開花期はちょうど梅雨どきとあって、週末の天気に恵まれない年もあり、この年にようやく、現地に足を向けることができました。油断しているうちに時が経ち、13年ぶりのこの山の訪問でしたが、植物の保護体制が強化され、希少種は保護柵で守られていました。 初めて見る開花期のカモメランは、保護活動の成果か、群生も見られて思ったより数が多く、順にめぐって観察する時間が取れました。白地に細かな紅紫色のドットが散りばめられた唇弁は、ほかのランにはない特徴的なポイントで、柵越しにマクロレンズを近づけると、個体ごとに模様も色合いも微妙に異なるのがわかり、楽しいひとときを過ごせました。 (2022.6.18 山梨県) ○野生植物写真館「カモメラン」へ ○「表紙によせて」バックナンバー |