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クガイソウ属には茎が直立するクガイソウ節と、同じくたれさがるスズカケソウ節があります。後者は国内から4種が知られてきましたが、スズカケソウの穂状花序だけが球状で花期が7月と早く、キノクニスズカケなど3種は花序が円錐状で花期が9月と遅いなどの特徴があり、形態・生態的にさらに2つのグループに分かれるようです。 2013年2月、この属に千葉県に固有のイスミスズカケが新たに加わりました。花序が球状なのはスズカケソウと同じですが、1つ1つの花はひとまわり小さく、葉は基部が心形で、表面の毛がまばらなどのちがいがあります。また、草丈が1〜1.5mになるスズカケソウに対し、イスミスズカケは見るかぎり1mもないものがほとんどです。スズカケソウ節では茎の先がつる状になってからみつき、地面についたところで根を広げて栄養繁殖する性質がありますが、この点はイスミスズカケも共通しています。 スズカケソウ節は主に西日本から知られる暖地の植物ですが、イスミスズカケはどのようにしてはるか東の千葉県に分布するようになったのでしょうか。かつてもっと暖かい時代に東日本まで分布を広げたスズカケソウがここで独自の種分化をとげたのか、あるいはかつて広く分布していたイスミスズカケがここだけに残ったのか、想像はふくらむばかりです。 この写真を2013年7月20日に42歳の若さで不慮の事故により急逝された、山岳・植物写真家の新井和也さんにささげ、ご冥福をお祈りいたします。 (2013.7.7 千葉県) ○野生植物写真館「イスミスズカケ」へ ○「表紙によせて」バックナンバー |
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