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3月の声を聞くと、植物の観察は急にいそがしくなるのですが、この年は東日本大震災の関係もあって、3月いっぱいは出かける時間がとれませんでした。冬のきびしい寒さの影響か、ソメイヨシノの開花が前年より1週間以上も遅れるなか、それなら早春の花もまだ咲いているだろうと、4月の第2週になってようやく東海地方へと車を向けました。 前年の3月中旬にトウノウネコノメを撮影したとき、ミカワチャルメルソウのつぼみが目に入り、今回こそ花を見ることができそうだと見こんで県境の峠を再訪したのですが、現地ではまだ満開のトウノウネコノメが残り、ミカワチャルメルソウはこんどもつぼみのものばかりでした。 気落ちして車を止めた場所までもどると、沢の斜面の湿った岩壁にたくさんのショウジョウバカマが葉を放射状に広げてはりついているのに気づきました。岩壁をたどってみると、紅紫色の花を咲かせたものが現れはじめました。ショウジョウバカマは垂直分布が広いのが特徴で、3千mの高嶺からこの峠のような丘陵地まで広く分布します。 このときは同じ沢でコウヤミズキも満開となっていて、開花が遅れた年はその年なりに新しい出会いがあるものだと、すっかりうれしくなりました。 (2011.4.10 愛知県瀬戸市) ○野生植物写真館「ショウジョウバカマ」へ ○「表紙によせて」バックナンバー |
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