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表紙によせて

 至仏山や尾瀬ヶ原に咲く植物を見ようと、尾瀬に足しげく通うようになったころ、尾瀬の植物図鑑にシラネアオイが掲載されているのに気づき、「こんな大きな花をつける野生の植物が、いったいどこにあるのだろう」と思った記憶があります。シラネアオイといえば、名前の由来となった日光白根山では、シカの食害により激減してしまったことで有名ですが、本来は日本海側の多雪地帯を中心に、平地から亜高山帯にかけて幅広く生える植物です。
 
 花弁のように見える4枚の淡紅紫色の萼片は、薄いだけあって傷みやすいらしく、尾瀬では雨の中、至仏山でようやく目にしたシラネアオイも、残念ながら写真にはなりにくいものでした。チシマザサやダケカンバが生え、遅くまで雪が残るような斜面を好むことがわかってからは、登山中に気づく機会も増えたような気がします。このようなところでは、サンカヨウオオサクラソウなど、さまざまな植物と混生する群落となって咲いています。
 
 北海道は千島列島やサハリンと共通する植物がある一方で、シラネアオイのように北限が北海道となるものも少なからずあり、シラネアオイの場合、北海道まで北上すると日本海側だけでなく、夕張山地や日高山脈まで分布は広がっています。また、本州のものとは形態的にややちがいがあるらしく、葉はより細かく切れこむ傾向があり、萼片は先端がとがらず、丸みを帯びたかたちのものが多いようです。

          (2006.7.8 北海道夕張岳)

○野生植物図鑑「シラネアオイ」
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