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表紙によせて

 日本人には、野山に出かけて花を手折ったり短歌に詠んだりして、そこに生える植物をめでる習慣が古くからあったせいでしょうか、庭に植えたり、花瓶に生けたりする植物についても、野生の植物をそのまま持ちこむ場合が多かったように思えます。江戸時代にさかんに行われた花きの品種改良でも、西洋のように種間交雑があまり一般的にならず、色変わりや倍数体など、自然に発生した突然変異の利用や、品種どうしのかけあわせが中心だったのも、野生のふんいきを残した品種が求められたせいかもしれません。
 
 ツワブキは海岸の草地や林縁などに生えますが、晩秋から冬にかけて大きな明るい黄色の花を数を多くつけることから、花の少ない季節に花を咲かせる植物として庭園などで利用されてきました。水はけのよいところであれば日陰でもよく育つことも、導入が容易だった理由の一つといえそうです。関東地方では11月中旬ごろから満開になりますが、公園で見かけるものには10月に咲きはじめるものもあるので、あるいは早咲きの個体が選抜されているのかもしれません。葉に斑が入った品種も知られており、斑がまばらにつくものや斑点状になるものなどがあります。

         (2002.12.8 鹿児島県笠沙町)

○野生植物図鑑「ツワブキ」
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