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「蜘蛛」、「鈴虫」、そして「蜂」。クモキリソウ属には昆虫に由来する名前がいくつもあります。羽を思わせる大きな唇弁と、脚のような細長い花被片の組合せは、たしかに昆虫のそれを連想させます。 この属の多くは地表に生える「地生」なのですが、フガクスズムシやクモイジガバチのように、木の幹や枝に「着生」する種類もいくつか知られています。着生種はどちらかといえば、ランのなかでも温暖な地域を本拠とするグループに多いのに、そういうわけでもないこの属に着生種が出現したのはどうしてなのでしょう。 その理由は、クモイジガバチを撮影したときに少しわかったように思います。着生していたのは、林床が湿地になっているようなミズナラ林、霧が発生する日も多そうで、これならきっと、熱帯のような高温多湿でなくとも湿度が維持され、クモイジガバチやその根のまわりにあるコケにも水分が十分に補給されそうです。 初めて目にするクモイジガバチは思った以上にミニサイズで、ジガバチソウの半分にも満たない高さでしたが、数多く開いた花たちはその色とあいまって、たしかにたくさんの昆虫が一ヶ所に集まり、とまっているようなふんいきでした。 (2014.6.29 栃木県) ○野生植物写真館「クモイジガバチ」へ ○「表紙によせて」バックナンバー |
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