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表紙によせて

 4月下旬ともなると、青森県でもソメイヨシノが咲きはじめますが、遠くに望む岩木山や八甲田山はまだ雪におおわれ、山間部では斜面や谷すじにはまだらもように雪が残っているのがみられます。ヒメホテイランはそんなころ、青森県特産のヒバ(ヒノキアスナロ)の林下でひそやかに花を咲かせます。


 ひと気のない山道にたどりつき、枯れ落ちたヒバの葉が降り積もった林床に目をやると、冬の豪雪による重みでギュッと圧迫され、花はおろか、葉を展開している植物もツバメオモトがわずかに見られるくらいです。

 
散策路に残る雪を踏みしめ、本当にもう咲いているだろうかと不安になりながらも足を進めるうちに、ピンク色の小さなヒメホテイランの花がいくつも目にとびこんできました。初めてのうれしい出会いに、心ゆくまでカメラのシャッターを切り、ヒメホテイランとじっくり向かいあいます。

 今回のように、おおまかな山域ていどの情報をもとに現地を訪ね、自分なりの生育環境などの推測を踏まえつつ、めざす植物を見つけることができたときは、満足感と喜びもひとしおで、また新たな植物との出会いを求めて出かける糧ともなります。
          (2013.4.30 青森県)

○野生植物写真館「ヒメホテイラン」
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