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表紙によせて

フクジュソウといえば、新春を祝うめでたい花として珍重され、年末になると園芸店には鉢植えのフクジュソウがならびます。正月向けに流通するフクジュソウは、秋に掘りあげて鉢に定植し、温度管理して花をつけさせた促成栽培品で、花つきのよい“福寿海”が主に用いられているようです。フクジュソウも江戸時代に多くの園芸品種が育成された植物で、赤い花をつける“秩父紅”や、花弁の先が細かく切れこむ“撫子”のほか、花弁が小さくなった“爪折笠”のような「変わりもの」も知られます。
 
 野生のフクジュソウが咲くのは促成栽培品よりずっと遅く、暖地で3月、雪が遅くまで残る地方では4月ごろになります。「雪の中から顔を出したフクジュソウ」を野生状態で見つけることはなかなかむずかしく、私はまだお目にかかったことがありません。最近の研究によれば、フクジュソウの花は太陽光により開く(傾光性)のではなく、温度が上がるにつれて開く(傾熱性)とのこと、雪が残る環境ではなかなか温度が上がらず、そのような光景はまれかもしれません。
 
 日本のフクジュソウは長くフクジュソウ1種とされてきましたが、フクジュソウのほか、キタミフクジュソウ、ミチノクフクジュソウ、シコクフクジュソウが独立種として分布することが最近になって明らかにされました。HP「石川の植物」の記事によれば、園芸品種にも“松任芽”のようにミチノクフクジュソウから育成されたものがあることが知られています。

          (1995.4.8 三重県藤原岳)

○野生植物図鑑「フクジュソウ」
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